「生成AIに投資したのに、部門によって手応えがまるで違う」——経営層や経営企画から、こうした声が聞かれます。結論から言えば、生成AIの成果は部門によって出やすさが大きく異なり、海外調査でも価値は一部の領域に偏って現れます。だからこそ、どの部門から着手するかという投資順序の設計が、成果を左右します。

本記事では、海外の一次調査が示す「成果が出やすい部門」の傾向を整理し、その順番を自社の投資順序へ翻訳する考え方を解説します。なお、部門をまたいだ回収期間そのものの設計はAI導入のROIはいつ出るかで扱っており、本記事はその海外データ版・投資順序編として補完する位置づけです。

生成AIの成果は、なぜ部門によって出やすさが違うのか?

頻度が高く、定型的で、効果を測りやすい業務ほど早く成果が出るからです。海外調査でも、生成AIの価値は特定の領域に集中して現れています。

頻度が高く定型的な業務に光が集まって早く実を結び、複雑な領域では光がゆっくり広がる図

McKinseyは、生成AIがもたらしうる価値のおよそ4分の3が、カスタマーオペレーション・マーケティングとセールス・ソフトウェアエンジニアリング・研究開発という4つの領域に集中すると分析しています。とりわけソフトウェア開発は成果が明確で、GitHubの調査ではコーディング支援の利用者が非利用者よりおよそ56%速くタスクを完了したと報告されています。これらは、作業の頻度が高く、成果を数字で捉えやすい業務が多い領域です。

一方で、投資すれば必ず成果が出るわけではありません。BCGは、投資しても目立った価値を生めていない企業が多く、大きな成果を規模化できている企業はごく一部にとどまると報告しています。成果は、単発の試行ではなく業務そのものの作り替えから生まれる、という点も各調査に共通します。公表された数字をそのまま自社に当てはめない見極めについてはAIの業務削減効果は本当かで解説しています。

海外調査に見る、成果が出やすい部門の順番は?

先行して成果が出やすいのは、ソフトウェア開発・カスタマー対応・マーケティングやセールスです。全社横断の調整や業務の作り替えを要する領域は、成果まで時間がかかる傾向があります。

Time-to-Value(成果が出るまでの時間)とは、投資してから成果が実際に現れるまでの期間のことです。この期間は部門で大きく異なります。ソフトウェア開発は、既製のツールが充実し効果も測りやすいため、比較的短い期間で成果が見えます。カスタマー対応は、問い合わせの一次対応や定型的な回答づくりで効果が出やすく、成果を測る指標も整えやすい領域です。マーケティングやセールスも、文章や提案の作成といった頻度の高い作業で早期に手応えを得やすいとされます。

反対に、経理やオペレーション、全社にまたがる業務など、複数の部門や既存の仕組みの作り替えを伴う領域は、成果まで時間がかかりがちです。これは効果が小さいという意味ではなく、価値が大きい一方で、実現までの道のりが長いということです。回収の時間軸が業務で異なる点は、AI導入のROIはいつ出るかでも整理しています。

自社の投資順序はどう設計するのか?

海外の順番をそのまま真似るのではなく、成果が出やすい部門から着手し、回収の時間軸を踏まえて順序を組みます。早い成果で土台を作り、時間のかかる領域へ広げるのが基本です。

複数の部門を表す点が成果の出やすさの順に階段状に並び、下から上へ投資の矢印が進む図

大切なのは、海外データを「答え」ではなく「業務の性質を読む材料」として使うことです。先行領域に共通するのは、頻度が高く・定型的で・効果を測りやすいという性質です。自社で同じ性質を持つ業務を見つけ、そこから着手すると、早い段階で成果を作れます。この「業務の性質で読み替える」考え方は、最初の1業務の選び方とも共通し、AIエージェントは最初のどの業務から始めるかで解説しています。

そのうえで、早く成果が出る領域と、時間はかかるが価値の大きい領域を、回収の時間軸を踏まえて順序づけます。早い成果で社内の納得と予算の裏付けを作り、その勢いで作り替えの必要な領域へ進むと、投資全体が前に進みます。エキスパート株式会社では、海外の先行データを踏まえた投資順序の設計から実行まで、IT企画の実践知で伴走しています。支援の詳細はサービス内容をご覧ください。

まとめ

  • 生成AIの成果は部門で出やすさが大きく異なり、海外調査でも価値は一部の領域に偏って現れます。
  • 先行して成果が出やすいのはソフト開発・カスタマー対応・マーケ/セールス。全社横断や作り替えを要する領域は時間がかかります。
  • 海外の順番をそのまま真似ず、成果が出やすい部門から着手し、回収の時間軸を踏まえて投資順序を設計します。

投資順序は、海外データを眺めて終わりにせず、自社で「頻度が高く・定型的で・効果を測りやすい」業務を洗い出すところから始めてみてください。部門別の投資設計を相談したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。


参照した一次ソース(数値は各機関の公表による):

  • McKinsey「The economic potential of generative AI」— 生成AIの価値の約4分の3がカスタマーオペレーション・マーケティング/セールス・ソフトウェアエンジニアリング・研究開発に集中
  • GitHub(コーディング支援の生産性調査)— 利用者が非利用者より約56%速くタスクを完了
  • BCG「Closing the AI Impact Gap」2025 — 大きな成果を規模化できている企業はごく一部にとどまる