「問い合わせ対応とトラブル処理で1日が終わる」「DXを主導してほしいと言われるが、日常業務で手一杯」──多くの情報システム部門が、この状態から抜け出せずにいます。
結論から言えば、突破口は「守りを固めて時間を生み出し、その時間を攻めに投資する」という順序にあります。気合いで攻めの活動を上乗せするのではなく、守りの仕組み化が先です。この記事では、コーポレートIT支援の現場で実践してきた、情シスを戦略部門へ変える道筋を解説します。
なぜ情シスは「守り」に追われ続けるのか?
情シスが忙しさから抜け出せない根本原因は、人手不足そのものではなく、場当たり対応が次の場当たり対応を生む構造にあります。

典型的な悪循環はこうです。
- 部門ごとにSaaSやツールが個別導入され、管理対象が増え続ける(シャドーITの温床)
- アカウント管理・設定・データ連携がバラバラになり、問い合わせとトラブルが増える
- 対応に追われて仕組みを整える時間がなくなり、さらに場当たり対応が増える
この構造のまま「DXを推進しよう」と活動を上乗せしても、時間は生まれません。先に構造を断ち切ること──つまり守りの仕組み化が、攻めへの最短ルートです。
「守りを固める」とは具体的に何をするのか?
守りの整備は、大きく3つの領域に分けて進めます。
1. IT基盤の整備 ネットワーク、セキュリティ、デバイス管理といった土台を標準化します。属人的な設定や例外構成を減らすほど、トラブルの発生源が減り、対応も速くなります。ゼロトラストなどの現代的な構成への移行は、セキュリティ強化とリモートワークの利便性向上を同時に実現します。
2. アカウント・ID管理の一元化 入社・異動・退職に伴うアカウント発行と権限変更を一元管理に移行します。ここが整うと、セキュリティリスクが下がると同時に、情シスの定常作業も大きく減ります。
3. SaaSの棚卸しと最適化 社内で使われているSaaSを全量把握し、重複するツールの統合、使われていない契約の解約、標準ツールの決定を行います。管理対象そのものを減らすことが、最も効果の大きい「守りの固め方」です。コストの可視化・削減という、経営に見えやすい成果も得られます。
定型業務の自動化はどこから着手すべきか?
守りの仕組みが整ったら、次は残った定型業務を自動化して時間を生み出す段階です。

着手の優先順位は「頻度 × 手作業の時間」で決めるのが定石です。効果が出やすい代表例は次の通りです。
- アカウント発行・権限設定: 入退社のワークフローと連動させて自動化
- 問い合わせの一次対応: よくある質問をチャットボットやFAQに集約し、生成AIで一次回答を自動化
- 定期レポート・棚卸し作業: ライセンス利用状況やセキュリティ設定の確認を自動集計に置き換え
特に生成AIは、問い合わせ対応やドキュメント整備といった情シスの「時間泥棒」業務の品質とスピードを圧倒的に高めます。AI前提で業務を組み替える考え方は、AX推進の始め方の記事で詳しく解説しています。
「攻めの情シス」は何をする部門なのか?
守りの整備と自動化で生まれた時間の投資先が、「攻めのIT」です。攻めの情シスとは、事業の成長に直接貢献する戦略部門を意味します。
- 業務部門の生産性向上を主導する: 現場の業務を理解した上で最適なSaaSを選定・導入し、システム間のデータ連携で業務プロセスそのものを改善する
- 全社のDX・AI活用を推進する: 全社データ基盤や生成AIの活用環境を整え、各部門の変革を技術面からリードする
- 経営の意思決定を支える: IT投資の費用対効果を可視化し、経営戦略と連動したIT計画を提案する
「システムを守る人」から「事業を伸ばす人」へ。この転換が実現すると、情シスは採用市場でも社内でも、選ばれる部門に変わります。
まとめ
- 情シスが守りに追われる原因は構造にあります。場当たり対応を生む構造を、仕組み化で断ち切ることが出発点です
- 順序は「守りを固める(基盤・アカウント・SaaSの棚卸し)→ 定型業務を自動化する → 生まれた時間を攻めに投資する」。この順番が最短ルートです
- 攻めの情シスとは、業務部門の生産性向上と全社DXを主導する戦略部門です。守りの整備はそのための土台づくりです
エキスパート株式会社は、IT基盤の整備からSaaS最適化、業務自動化まで、「次世代型の情報システム部門」への変革を一気通貫で伴走します。自社の情シス改革にお悩みの方は、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。




