「計画書とWBSの作成に何日もかかるのに、動き出すと結局、想定外のタスクが次々に出てくる」──プロジェクト立ち上げ期のPMO・プロジェクトマネージャーが繰り返し直面する問題です。

結論から言えば、計画立案でのAI活用の基本形はAIがドラフトを作り、人が精査して仕上げるという分業です。これにより作成時間を短縮しながら、むしろ抜け漏れを減らせます。本記事は連載「PMOのためのAI活用ガイド」の第2回です。第1回(総論)で示した業務マップの「計画」領域について、プロジェクトマネジメント支援の実践知をもとに具体的な進め方を解説します。

計画書・WBS作成の何が大変なのか?

従来の計画立案には、構造的な難しさが2つあります。ゼロから書き起こす負荷と、個人の経験に依存する抜け漏れです。

ドラフトを組み上げる工程と精査して仕上げる工程の分業イメージ

計画書もWBSも、白紙から書き始めると膨大な時間がかかります。過去の類似プロジェクトの資料を探して流用しようにも、探す手間がかかるうえ、前提が違う計画の流用はかえって危険です。

さらに深刻なのが抜け漏れです。WBSの品質は作成者の経験に大きく左右されます。開発タスクは細かく洗い出せても、関係部門との調整、承認プロセス、データ移行、運用引き継ぎといった成果物が見えにくいタスクは、経験者でも見落としがちです。そして計画段階の見落としは、実行段階で「想定外の作業」として跳ね返り、遅延の火種になります。

AIと作る計画立案はどう進める?

進め方は次の4ステップです。ポイントは、AIを「答えを出す存在」ではなく「たたき台と検証を担う相棒」として使うことです。

ステップ1: 前提情報を整理して渡す

プロジェクトの目的、主要成果物、体制、期間・予算、前提条件をAIに伝えます。この整理自体が計画の質を高める効果もあります。曖昧なまま任せると、一般論のたたき台しか返ってきません。

ステップ2: 計画書・WBSのドラフトを生成する

整理した前提をもとに、AIに計画書の骨子とWBSの階層展開を依頼します。AIは類似プロジェクトの定石を踏まえた標準的なタスク構造を素早く展開できます。ここで数日かかっていた作業が大幅に短縮されます。

ステップ3: 抜け漏れをAIに検証させる

生成したWBSに対し、「このWBSで漏れているタスクは何か」「調整・承認・移行の観点で不足はないか」と別の角度から検証を依頼します。作った本人には見えない穴を、視点を変えたチェックで洗い出します。

ステップ4: 人が精査して確定する

最後は人の仕事です。自社固有の事情を織り込み、タスクの粒度と依存関係を整え、計画として確定します。

AIによる「抜け漏れ検出」はなぜ効くのか?

抜け漏れ検出は、計画立案におけるAI活用の最も価値ある使い方です。理由は、AIが人の思い込みの外側から網羅的に照らせるからです。

完成間近のパズルに残る見落としの空隙が光って示されるイメージ

人がWBSを見直すとき、どうしても「自分が知っている進め方」の範囲で確認してしまいます。一方AIは、一般的なプロジェクトの定石と照らして「この種のプロジェクトなら通常存在するはずのタスク」を機械的に確認できます。特に効果が高いのは次の領域です。

  • 部門間の調整・合意形成: 関係部門への説明、利害調整の場の設定
  • 承認・手続き系: 稟議、契約、セキュリティ審査、監査対応
  • 移行・定着系: データ移行、並行稼働、マニュアル整備、利用者教育
  • プロジェクト管理自体: 会議体の設計、リスク管理、品質チェックの工数

いずれも「作るもの」が見えにくいために漏れやすいタスクです。なお、洗い出したタスクの工数をどう見積もるかは、次回(第3回)で詳しく扱います。

人が必ず精査すべきポイントはどこか?

AIのドラフトを計画に仕上げる際、次の3点は必ず人が判断します。ここを省くと、もっともらしいが実行できない計画になります。

  1. 自社固有の制約の反映: 繁忙期、キーパーソンの稼働、他プロジェクトとの資源競合など、AIが知り得ない事情を織り込む
  2. タスクの粒度と依存関係: 管理可能な粒度に揃え、タスク間の前後関係とクリティカルパスを確認する
  3. ステークホルダーの妥当性確認: 誰の承認・協力が必要かは組織の力学そのもの。現場を知る人にしか検証できません

そして最後に、計画の責任は人が持つという原則です。AIはたたき台と検証で貢献しますが、この計画で行けると判断するのはPMOであり、プロジェクトオーナーです。ベンダーが作る計画を見極める視点は発注側の目利き力の記事も参考になります。

まとめ

  • 計画書・WBS作成のAI活用は「AIがドラフト、人が精査」が基本形。作成時間を検証と判断の時間に振り替えます
  • AIは定石に基づくタスク展開と、調整・承認・移行系の抜け漏れ検出に特に効きます
  • 自社固有の制約・タスクの粒度と依存関係・ステークホルダーは必ず人が精査し、計画の責任は人が持ちます

次回・第3回は「工数見積の『勘と経験』をAIでどう補正する?」です。計画立案へのAI活用を自社で試したい方は、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。貴社のプロジェクトに即した進め方を、実践知をもとにご提案します。